東京ろまんちっ句

東京ろまんちっ句


著者:望田市郎
制作:Ahwin Co., ltd.

本書は、雑誌『東京人』に一九八七年から足かけ五年間にわたり、「とうきょうヒッチはい句」と題して掲載したコラムをまとめたものです。

前口上より──
「東京育ちということ」
江戸の時代から地方の男たちは「江戸」をめざして大挙してやって来た。「立身出生」を願い、「商売での自立」をめざして集まった。
現在も地方の農村・漁村の若者たちは続々と「東京」などの大都市をめざしてなだれ込むようにやってくる。
そして、やがて彼らは、結婚し、家庭をもつ。その住宅やマンションが、30年35年という長期ローンの完済期限がそのまま「東京都民」として永住することを意味する。
つまりそれは、そのまま「東京育ち」という条件にも充当することにもなるのだ。
かつて「東京郊外」といわれていた閑静な住宅地は、このところ急速に変貌している。
つまり、昔ながらの自然の興趣を遺していた和みのあった風景は、突如として現出した近代ビル(タワーマンションなど)によって、大きく変貌した。
たとえば、武蔵野市吉祥寺とか、杉並区とか、練馬区大泉・石神井辺とかの早くから住宅地として造成されてきた街よりも、もうひとつ外郭の「ひなびた風情の町」だった場所が、それこそいま眼を見張るように「近代化」を遂げている。
東京周辺でいえば、最近まで田や畑や雑木林だった半農村地域の変革は、むしろ驚異的ですらある。
たとえば埼玉県所以西とか、松戸・市川市以北、また横浜以西などなどの新タウンの開発造成地。
拙著「東京ろまんちっ句」に記録した街もすでに大変貌をとげている。
さて、急増する「東京新民」の皆さんにとっての――つまり、「人生を全うする街」は、どんな記憶を遺すのだろうか。


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